褐れん石 allanite
(Ca,La,Ce,Th)2(Al,Fe,Mn)3O(SiO4)(Si2O7)(OH)
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斜灰れん石のCa2+→(La3+,Ce3+などの希土類)・Al3+→(Fe2+,Mn2+)の対置換が進んだものに相当する。

二軸性(+,−)2Vz=60°〜2Vx=40° α=1.69〜1.79程度 β=1.70〜1.82程度 γ=1.71〜1.83程度 γ-α=0.02〜0.04程度 Thを数%含み,娘核種などのα壊変などで結晶構造が破壊され結晶度が低くなっていることがあり(メタミクト化),そのようなものは屈折率や干渉色が低くなり,細かい亀裂が多く,濁ったように見える。

色・多色性:
濃淡の褐色で,赤味が強いものや黄色が強いものもある。多色性は明瞭だが,メタミクト化が進むと弱くなる。

右画像は花こう岩中の褐れん石の多色性。黒雲母や普通角閃石に似るが,へき開の発達は著しくなく,また,普通角閃石のように緑色を帯びることはあまりない。


消光角:へき開に対し直消光〜40°程度。結晶の伸び方向に対しては直消光だが,不定形のことが多く,かつ,メタミクト化が進んだものはへき開線も認められない。

形態:b軸方向に伸びた柱状の自形〜半自形,不定形粒状〜粗大な塊状。

伸長:b軸方向に伸び,かつb=Yなので,正の場合も負の場合もある。

へき開:明瞭。しかしメタミクト化が進んだものはへき開線は認められない。

双晶:(1 0 0)にまれ。多色性や消光状態で認められる。

累帯構造:Ca→(La3+,Ce3+など)・Al→(Fe2+,Mn2+)の置換が進むと濃色になり,それによる累帯構造が平行ニコル下での色の濃淡でわかる場合もある。

産状
花こう岩には副成分鉱物としてTh・U鉱物がひんぱんに含まれるが,褐れん石はジルコンとともにその主要なものである。不定形粒状のほか,柱状の場合もあり,角閃石と紛らわしいが,褐れん石はへき開の発達は悪く1方向で,かつ,結晶の伸び方向に対しては常に直消光する。そして緑色を帯びることはあまりない。また黒雲母に接する部分には暗色の放射性ハロが認められる。
褐れん石は希土類鉱物だが,原子番号が小さめのランタノイド(La・Ce・Pr・Ndなどのイオン半径の大きい軽希土類)に富み,かなり分化の進んだ花こう岩に顕著に含まれる傾向がある。なお,ペグマタイトからは粗大な自形や塊で産する。



花こう岩中の褐れん石(放射性ハロ)  
Aln:褐れん石,Kf:アルカリ長石,Bt:黒雲母

褐れん石は成分中のThのため,放射能があり,それに接する有色鉱物(特に黒雲母)に放射性ハロを与える(上画像では褐れん石の周りの黒雲母が暗色になっている)。なお,ジルコンも黒雲母等に対し放射性ハロを与えるが,ジルコンの色は無色あるいは褐れん石よりも淡色で,かつ,屈折率や干渉色はやや高い。
なお,このような放射性鉱物は偏光顕微鏡下では無色鉱物に対しては放射性ハロは認められない(ペグマタイトなどでは肉眼では石英に接する部分は濃灰色,長石に接する部分は赤褐色の放射性ハロが認められる)。